マイクロ法人は、個人事業主・フリーランスの人が社会保険料を最適化するために設立・運営する会社です。
マイクロ法人とは?
1)マイクロ法人の定義
マイクロ法人の明確な定義はありませんが、一般的に以下のような会社を指します。
- 小規模なビジネスを営む
- 従業員を雇わずに社長1人で経営する
また、同じものを「プライベートカンパニー」という呼び方をする場合もあります。
2)マイクロ法人を設立する目的
マイクロ法人を設立する最大の目的は、社会保険料の最適化です。
個人事業主は高額な社会保険料(特に国民健康保険料)を負担することになりますが、マイクロ法人を設立することで、その負担を数十万円単位で抑えることができます。
他にも、法人としての経費を活用した節税や、法人向けの各種支援制度を利用できる点も、マイクロ法人設立の大きな魅力です。
マイクロ法人のメリット・デメリット
ここからは、マイクロ法人を設立する際に考慮すべきメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット① 社会保険料の最適化
マイクロ法人の最大のメリットは社会保険料の最適化です。
個人事業主の場合、通常であれば国民健康保険と国民年金に加入します。
このうち国民健康保険のほうは収入が多ければ多いほど保険料が高くなるうえに、扶養家族がいる場合には家族の分まで保険料が上乗せされるため、非常に負担が大きくなります。
しかし、マイクロ法人を設立して役員になり少額の役員報酬を設定すると、低い等級で社会保険に加入できるため社会保険料の支払いを数十万円単位で抑えることができます。
また、国民健康保険料は数年連続で上限額が引き上げられていますし、保険料は「税金」ではないため経費や控除で支払額を圧縮することができません。
そのため、マイクロ法人は高額な保険料をコントロールする手段として大変有効です。
社会保険料最適化の例
まず、国民健康保険料を支払う場合です。
国保の保険料は自治体ごとに異なりますが、東京都新宿区の例では以下の金額になります。
・所得400万円 ⇒ 年間保険料47万5,793円
・所得700万円 ⇒ 年間保険料82万0,493円
・所得1000万円 ⇒ 年間保険料89万0,000円
※いずれも40歳未満の場合、令和6年版(https://www.city.shinjuku.lg.jp/content/000363720.pdf)
次に、マイクロ法人を設立して健康保険に加入する場合です。
最低等級で役員報酬を設定すると、年間保険料は6万2,261円(会社負担+個人負担)になります。
(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r6/leaflet/r60207tokyo.pdf)
上記国保の例と比べると、所得によって40万円~80万円ほど支払額を小さくできます。
メリット② 所得分散による節税効果
マイクロ法人では、所得分散を行うことで所得税や住民税の節税効果を得ることができます。
また法人として支出できる経費が増えるため、税負担を軽減できます。
メリット③ 法人経費の利用
法人は個人事業主よりも経費計上できる範囲が広くなります。
事業に関連する費用をより多く経費化することで節税が可能です。
例えば、社用車やオフィスの家賃、通信費などが法人の経費として認められるため、経費計上による税務面でのメリットがあります。
デメリット① 事務負担が大きい
マイクロ法人運営では、法人税の申告や会計帳簿の管理など事務負担が増える点がデメリットです。
個人事業主と比べると税務や会計に関する知識が必要となり、最初は少し大変に感じるかもしれません。
ただし、インターネットでの情報検索やクラウド帳簿サービスを利用すれば、専門家への依頼なしで自分で書類の作成や手続きを進めることも可能です。
特にマネーフォワードやfreeeなど、クラウド型会計ソフトを活用することで手間を大幅に減らすことができます。
デメリット② 個人事業とは別の事業が必要
マイクロ法人では個人事業とは別で法人用の事業が必要です。
個人事業と同じ内容だと「不適切な所得分散による脱税」と見なされてしまうためです。
元々複数の事業をやっている場合には一部を法人事業に移せばよいですが、もし思い当たるものがない場合は本業の知識や経験を生かした別の事業として以下のような事業が可能です。
- コンサルティング … 得意分野や専門知識を生かし、企業や個人にアドバイスを提供
- ブログ, SNS運営 … 役立つ知識を情報発信し、アフィリエイトや広告収入を得る
- オンライン講座 … スキルをオンラインで教える
マイクロ法人の設立方法
詳しい手順は別記事にて説明しますが、大まかな流れは以下の通りです。
1)会社情報の決定
2)資本金の払い込み
3)登記申請、役所への届け出
設立費用は約6万円、期間は1ヶ月ほどで法人を設立できます。
法人設立はすべて自分でやろうとするとかなり複雑なので、会社設立サービスを使うことをおすすめします。
おすすめはマネーフォワード会社設立です。
利用料金は無料で、行政書士への定款作成手数料5,000円のみで法人設立に必要な書類を作成できます。

法人の設立手続きには時間がかかるので、なるべく早く開始することをおすすめします。
社会保険料の支払いで、毎月数万円単位の差がつきます。
まとめ
今回はマイクロ法人とそのメリット・デメリットについて解説しました。
- マイクロ法人とは主に社長1人で経営する小規模な会社のこと
- マイクロ法人を活用すると、社会保険料の最適化など多くのメリットが得られる
- マイクロ法人の運営には多少手間がかかるが、年間で数十万円の差がつくため手間に見合うだけのメリットはある
社会保険料の負担が大きい、節税の幅をもっと広げたいと感じていると感じている個人事業主・フリーランスの方は、ぜひマイクロ法人の設立を検討してみてください。