2023年からインボイス制度が始まり、消費税を納付する個人事業主が増えました。
消費税の納め方には、「一般課税制度」や「簡易課税制度」、さらには期間限定で導入された「2割特例」という選択肢があります。
本記事では、これらの制度の内容とどの方式を選ぶべきかについてまとめます。
個人事業主の消費税の納め方
個人事業主が消費税の納め方には、3種類の方法があります。
① 一般課税
一般課税制度では、受け取った消費税額と支払った消費税額の差額を計算して納付額を求めます。
納付額 = 受け取った消費税 – 支払った消費税
この方法は、売上や仕入れなど全ての取引について税率や課税・免税の区別を記録する必要があり、事務処理の手間が多くかかります。
② 簡易課税
簡易課税制度は、受け取った消費税額に一定割合(みなし仕入率)をかけて、支払った消費税額を計算します。
納付額 = 受け取った消費税 – (受け取った消費税 × みなし仕入率)
みなし仕入率は業種によって40%~90%の範囲で設定されています。
事業区分ごとのみなし仕入れ率
事業区分 | 該当する事業 | みなし仕入率 |
第一種事業 | 卸売業 | 90% |
第二種事業 | 小売業、農業・林業・漁業 | 80% |
第三種事業 | 製造業、建設業、農業・林業・漁業など | 70% |
第四種事業 | 飲食業などと、その他の事業 | 60% |
第五種事業 | サービス業など(運輸通信業、金融業、保険業) | 50% |
第六種事業 | 不動産業(賃貸、管理、仲介) | 40% |
例えば、年間売上550万円(売上500万円+消費税50万円)のフリーランスエンジニアの場合、ITエンジニアは第五種事業に該当するので、消費税の計算は以下のようになります。
50万円(受取り消費税) – (50万円 × 50%) = 25万円
なお、簡易課税制度を利用できるのは課税売上高が5000万円以下の場合です。
原則として、課税期間の前日までに届出書を提出する必要があります。
③ 2割特例
2割特例では、受け取った消費税額に対して2割(20%)をかけて納付額を計算します。
納付額 = 受け取った消費税 × 0.2
なお、2割特例はインボイス制度を機に作られた、期限付きの特例制度です。
課税売上高が1000万円以下の事業者が利用でき、個人事業主であれば令和8年分の確定申告まで適用できます。
どの方法が消費税の納付額を低く抑えられるか
どの方法が納付額を低く抑えられるかは、以下のように判断できます。
- みなし仕入率が80%以下 → 2割特例
- みなし仕入率が90% → 簡易課税
※上記基準は「みなし仕入率が実際の仕入率より高い場合」のものです
例えば、先ほどのフリーランスエンジニアの例では消費税額は以下のように計算されます。
2割特例を使うと、簡易課税を使うよりも納付額を15万円も小さく抑えられます。
▼年間売上550万円(売上500万円+消費税50万円)のフリーランスエンジニア
2割特例 … 50万円 × 0.2 = 10万円
簡易課税 … 50万円 – ( 50万円 × 0.5 ) = 25万円
(補足)
もし「みなし仕入率が実際の仕入率より低い」場合は一般課税制度を選ぶ方が消費税額は低くなります。
しかし一般課税制度を利用すると事務処理の負担が大きくなるので、差額の大きさと手間を考えてどちらの制度を使うか検討する必要があります。
まとめ
個人事業主の消費税納付方法について整理しました。
一般的には、2割特例 → 簡易課税制度 → 一般課税制度の順で納税額が抑えられる場合が多いです。
自分の事業に最適な制度を選び、消費税の負担を軽減するようにしましょう。